医薬経済学とアウトカム研究の啓発と普及を推進する国際学会であるInternational Society for Pharmacoeconomics and Outcomes Research (ISPOR)では毎年ヨーロッパにおいて学術集会が開催されており、今年は11月10日~14日の期間、スペイン(バルセロナ)のCentre de Convencions Internacional de Barcelonaにて行われました。
学会初日、2日目は今年も数多くのShort Courseが開講されました。毎年開講されている医療経済やHealth technology assessment (HTA)の基本、モデリングの講義に加え、観察研究の方法論の講義も多くみられました。近年の観察研究の解析では、交絡の調整に傾向スコアが用いられることが多いですが、”Use of Instrumental Variables in Observational Studies of Treatment Effects”の講義では操作変数による交絡調整という新たなアプローチを学ぶことができました。少人数の講義であったためアットホームな雰囲気であり、グループディスカッションも講師が助言を交えながら穏やかに進みました。
学会プログラムが開催される3~5日目は来場者数も増え、会場は活気にあふれていました。スタートとなる1stプレナリーセッションでは現在EU各国で行われている薬剤のrelative effectivenessの統一化(Joint Clinical Assessment)を進めるにあたっての課題やメリットについて、支払者、製薬企業、患者など各立場からの視点でディスカッションされていました。また興味深い試みとして、ISPORのアプリを用いてパネリストに質問できるというシステムが採用されていました。
期間中の各セッションの中でも方法論のセッションに注目すると、臨床試験、観察研究のいずれにおいても
・治療切り替えをどのように扱うか
・観察期間後の生存曲線の外挿
という話題が多かったようです。治療切り替えによるバイアスを調整する方法としてはRank Preserving Structure Failure Model (RPSFTM)、2-stage法、 Inverse Probability of Censoring Weighted (IPCW)法などが主流ですが、それぞれのメリットとデメリットについて、また各立場からの視点でディスカッションされていました。
ポスター発表、各社のブース出展も数多く、すべてを見ることはできませんでしたが、大変勉強になる学会参加となりました。また是非参加したいと思います。
(文責:YM)