ハーバード公衆衛生大学院
(Harvard School of Public Health, HSPH)

ハーバード公衆衛生大学院(Harvard School of Public Health, HSPH)で8月17日~19日に開催された教育プログラムに参加しました。本プログラムはHSPHが定期的に開催している教育プログラムの一つで、公衆衛生を専門とする医師や研究者、製薬・医療機器メーカーの臨床研究に関わっていらっしゃる方、ヘルスケア領域のコンサルタントなど計50名程度が参加していました。

プログラムは(1)患者QOL評価をメインとしたPRO研究のデザインとその評価方法、(2)疫学研究のデザインとその統計学的評価法、(3)医療経済評価、の3領域で構成されていました。(1)のPRO研究では、多面的であるQOLドメイン評価のためのMeasurement Model(スタディのマップ)の作成方法、患者QOLを定量化するために工夫すべき質問構成や表現、QOL研究の進め方、結果のバリデーション方法などについてのレクチャーがありました。(2)の疫学研究では、EMR(Electrical Medical Records)を用いた後向き研究のデザインや先行研究の解説、オッズ比やリスク比、ロジスティック回帰分析といったカテゴリカルデータ分析に関連する代表的な解析理論や手法、共分散構造分析(SEM)を用いたQOL評価の解説などがありました。(3)の医療経済評価では、主に費用効果分析の概念やQOL値の評価方法、増分費用効果比(ICER)の考え方についての解説と、先行研究の解説がなされました。

米国は2012年12月のPCORI(Patient-Centered Outcomes Research Institute)設立に代表されるようにPatient-Centered Outcomes Researchを重視しているため、本プログラムもそれを意識した内容という印象を受けたと同時に、EMRなどの研究ツールの整備、字実施研究のスケールやその精緻性など、多くの驚きと刺激を受けることができました。

開催中は参加者全員で朝食、昼食をとるようになっていたため、交流を深める機会が多いのもこのプログラムの魅力の一つです。参加者の大半は米国の方だったので、保険制度やEMRの管理方法や活用方法、CER(Comparative Effectiveness Research)を実施する上での医療機関側と製薬・医療機器メーカー側の連携など、レクチャーとはまた違ったリアルな話も伺うことができました。日本からの参加は私を含め2名であったこともあり、製薬・医療機器メーカーの方とは日本支社の話や日本の保険制度、プライシングプロセスについて情報交換をする機会にもなりました。2日目の夜はHarvard Faculty Clubでのディナーが企画されており、おいしいワイン(アメリカ産ではなくドイツ産でしたが)とシーフードを囲んでの楽しいひと時を過ごすことができました。

あっという間の3日間ではありましたが、改めてヘルスアウトカムリサーチの奥深さと魅力を実感できる貴重な機会となりました。

ダイレクタ― 井上 幸恵

セミナー会場の様子①
セミナー会場の様子②