健康関連QOLや患者報告アウトカム(patient reported outcome, PRO)に関する質の高い研究の発展を推進する国際学会であるThe International Society for Quality of Life Research (ISOQOL)のAnnual Conferenceが2018年24日から27日にアイルランド、ダブリンにて開催されました。

会場となったClayton Hotel Burlington Road

今回で25回目となる本学会ですが、昨今のHTAにおいてPatient-centered outcomeがより注目され始めている背景から、今回弊社からも初めて参加させていただきました。

学会の初日に行われたワークショップではPROによる結果の評価に関する各ガイドラインの解釈について詳しく解説したセッションに参加し、とくに近年研究が進んでいるMID(minimum importance difference: 臨床的に意味がある群間差)やMIC(minimum importance change: 臨床的に意味がある各患者の経時的変化)等について改めて考え方を整理することができました。Plenary sessionではスマートフォン等のデジタルモバイルデバイスを用いたPROデータの取得技術に関する最新事例について紹介があり、患者にとって分かりやすく入力しやすいインターフェイスやデータの入力をリマインドする機能等によってこれまでの研究に比較して大きなメリットがあることなどが議論されていました。

Plenary sessionの様子

 ポスタープレゼンテーションや口頭発表による個別の研究事例に関するセッションでは各疾患領域のプロファイル型尺度の開発や言語バリデーションを含む各種バリデーション結果についての報告が多かった印象です。また、費用効果分析に用いられるQOL値を測定する尺度(EQ5D等)とプロファイル型尺度のマッピング研究に関するセッションにも参加し、研究の実施にあたり直面した課題等について研究者と議論することができました。がん領域で用いられることが多いEORTCやFACTをQOL値に変換する指標の開発条項についても紹介があり、本件については特に今後の動向に注目したいと考えています。

ポスター会場の様子

学会を通じ特に個人的に興味深かったのは、随所でInterpretation(解釈)というキーワードが良く用いられていたことです。QOLやPROを何らかの介入の効果指標として用いる場合、その統計学的な有意性や何らかの基準値に基づく画一的な評価だけでなく、得られた結果の背景に個々の患者にどのような変化や影響があったのかを捕えようとする姿勢が重要であることを感じることがきました。また、Plenary sessionでデータ取得時における患者にとっての分かりやすさや取得データの信頼性について触れられていたこと、個別の研究発表に言語バリデーションをテーマにした事例が多かったことなども含め、QOLやPROの評価のベースとなっている質問票や調査における言語的クオリティの重要性を再認識しました。

今回初めてQOLやPROを専門に取り扱う学会に参加し、その最新の研究事例や同行に触れることで個別の研究において必要な考え方や考慮すべき課題について学ぶことができ、今後のプロジェクトや課題解決に大いに役立つよい経験になりました。

ダブリンにあるアイルランド最古の図書館「トリニティカレッジ図書館」
ダブリンの名産「ギネスビール」

(文責:TM)